心霊写真のススメ
ちょっと聞いてくれないか?最近気になってることがあってさ。うちの集合住宅の隣の部屋から物音がするんだよ。カサカサ…とか、サッサッ…ていう微かな音が。隣の婆ちゃん、先週だったかなぁ?引っ越したハズなんだよなぁ。業者が修繕に来てるにしても真夜中にやるかぁ?上の階の生活音が響いてるってのが俺の結論なんだけど…さぁ。ひょっとしたらヒョッとするかも知れないだろう?何がってアレだよ。幽霊ちゃん!!
んー物騒だからねぇ、最近は特に。引っ越しの挨拶とかダルいことしなくなったから住人の増減に気付きにくいって事情もあるんだけど、それにしても急だったしなぁ。超高齢だったからもしかしてってこともあるよなぁ。何せここ暫く姿を見てねーし。俺が夜勤多いせいでもあるんだけどね。
そこでだ!!俺の部屋のベランダから手を伸ばして隣の部屋をカメラで撮れば、もしかしたらもしかするかも知れないだろ?何がってアレだよ、幽霊ちゃん!!
よーし!俄然やる気になってきたぞォ!!えーっと、フラッシュ設定にして、連続撮影にして…そうそうコレよコレコレ!!自撮り棒にセットして準備オーケー!!にゃははは、本物の幽霊ちゃんが撮れたらどうすんべ。Twitterにあげて?拡散バズりまくり?あり得ねーっての!!それでは丑三つ時まで待ってから突撃しようと思います。明日休みで良かったァ。にゃははは。
数日後─────俺は入院していた。まぁ、お約束というヤツだった。「馬鹿かよ。そんな理由で足を折ったら世話ねえだろが。」見舞いに来た友人の有難ーい説教を右から左に流してニヤリと笑う。「オイオイオイオイ…。なめてもらっちゃ困るぜぇ?俺がタダで骨を折るとでも?」友人の眉が片方ピクリと上がった。「…撮れたのか…?」「エグいぜぇ。覚悟して見るんだな。」
二階のベランダの手摺から身を乗り出して滑って落下した時、何がどうしたのか俺のスマホ(自撮り棒付き)は上手いこと柵に引っ掛かった上に録画モードに切り替わった。神の采配だと思うことにしよう、カメラは気を失って動かない俺の方をドンピシャで捉えていたのだから。10秒も経たないうちにガラガラと窓が開く音が聞こえてきた。おっ?誰か気付いた?と思う間もなく煌々とフラッシュが焚かれる。カシャカシャ!!カシャカシャ!!と集合住宅側からも向かいの一軒家側からも一斉に撮影会が始まって終わり、ガラガラと窓が閉まる音だけが響いた。─────静寂が続いた数分後、サンダル履きのスウェット姿のおっさん(頭髪寂しげ)が倒れている俺に近付いて行くと近距離からパシャリとやって帰って行った。奴は4階の住人だと記憶している。4階からは遠目すぎたのだろう。誰が呼んだのか救急車が到着したのはもう少し後になってからだった。
録画を見終わった友人が言い放った。「今すぐ引っ越せ!!!馬鹿!!!」にゃははは。人間って怖~。
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