生者と死者の存亡を懸けた惨劇の幕が上がる
大長編過ぎない?
笛の音が闇夜に響き渡り境内は厳かな雰囲気を醸し出す。今宵、外場村の神社では霜月神楽が奉納される。歌や太鼓、鉦鼓の音色に合わせて舞などを奉ずる湯立と呼ばれる神事を夜を徹して執り行うのだ。湯立とは神前に据えた大釜で湯を沸かし、神懸かった巫女が参列者に湯を振り掛けて五穀豊穣や無病息災を祈願するという何とも古式ゆかしい伝統ある儀式だ。田舎の祭りなんてこんなもんだ、尾崎敏夫は呑気にそう考えていた。とどのつまり酒が飲めりゃ上々なのだ。─────本当に人がたくさん集まっているのね。隣にいる女が呆れたような声を出す。女の名は桐敷千鶴、屍鬼だ。桐敷家の若い母親のように成りすましているが奴らに血の繋がりなど有りはしない。寄ってみるかい?少ないけど屋台も出ているはずだからと、さりげなく誘導する。女は逡巡していたようだが、結局誘惑には勝てなかったようだ。愚かな女だ───。一の鳥居に近づくにつれ桐敷千鶴の姿に気付いた村人達が話しかけてくる。ごく普通の人間のように振るまう彼女を見て安堵しているのが手に取るようにわかる。愚かなのはこの女だけではない。恭子の葬儀が終わり一段落した後で、敏夫は自分の喉元にまで奴らの手が及んでいたことを漸く知ったのだ。残っているのは武藤
さんとやすよさんだけになってしまった。律っちゃんも───救うことが出来なかった───。体の強張りが伝わったのだろう、俺の腕に回した手に力を込めてきた。自分の獲物だと誇示しているつもりなのか知らないが、お前さんにしてやられる気は毛頭ないよ───敏夫は胸の内で断言する。鈴の音が玲瓏と鳴り響くと女は包帯を巻いた手に再び力を込めて合図した。急いでこの場から離れようと必死の形相で急き立てる。───鳥居をくぐることを忌避しているのか?神社やら鈴や抹香の何が奴らを恐れさせるのか自分には解らないが、これを利用しない手があるか?この女…屍鬼に吸血された当初は意識が朦朧として言いなりにされていたが、奴らへの憎悪がそうさせるのか敏夫は完全には支配されずにいたのだ。身の程を弁えず厚かましくも神々の鎮座する神域に紛れ込もうとした愚かな屍鬼が露骨に怯えながら後退る様を冷たく見遣って、獲物の悲鳴に耳を貸さない理由も慈悲を与える寛容さも、今この瞬間には一切不要なのだと敏夫の心は非情な冷酷さで満たされていった。
千鶴ちゃん逃げてーーーーー‼️超逃げてーーーーー‼️
敏夫さん、あんたぁ強すぎんか?身も心もタフすぎるだろー。この人が屍鬼に屈っしなくて本当に命拾いしたよ村の人達は…。
夥しい血溜まりの中心には、ボロ雑巾のように成り果てた桐敷千鶴の死体が打ち捨てられていた。周囲に漂う噎せ返るほどの血の臭いを堪えて其方に目をやれば、その胸部には古典の再現よろしく木製の杭が深々と突き刺さっている。由緒正しき吸血鬼の退治方法は屍鬼にも効果絶大というわけだ。その場にいた村人達の中には屍鬼の襲撃によって家族を喪った者が大勢居るのだ。災禍を齎した張本人を逃す理由など何処にもありはしなかった。
私の紹介ではポッと出即死亡の千鶴ちゃん可哀想…。彼女の背景を掘り下げちゃうと、大川の父ちゃんと息子も出さねばならないからねぇ。残念ながら✂️カット✂️しました~。彼らも興味深い親子だけど私の琴線には触れなかったからね。そういう登場人物が結構居るよーって言うか、エピソードが多過ぎて絞りきれないです。(文庫本を買って読んでね)私は素直に推しだけをピックアップしてるから。
大切な家族である千鶴ちゃんを村人達に惨殺されたと報告された沙子ちゃんは、冷静を装いつつ気丈に辰巳くん達に指示を出します。けれども心中は穏やかであるはずもなく…一体全体どういうつもりなのか私には理解できねぇんだけど、桐敷のお屋敷に自ら赴いた静信さんに弱音を漏らすほど心乱してしまいます。こらー‼️本気で殴るぞ貴様ー‼️何故あなたが敵の軍門に下っているんですかね??屍鬼というより沙子ちゃんにシンパシーしすぎやろがぁ。生きるか死ぬかの選択で進んで死を選ぶのはメンヘラ激しすぎないかーい⁉️もうこの人の精神構造は深く知らない方がいいや…。魚の目ん玉を覗き込んでる気分になる。お願いだから人間の味方をして下さい。
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